ドン・ナチュール

前のプロジェクトのクライアントが奢ってくれるということで、銀座にあるステーキ屋ドン・ナチュールへ行った。銀座一丁目の駅前の目抜き通りに面したビルに入っているにも関わらず、看板が出ていない怪しげな店(パンフレットには「隠れ家的」と書いてある)である。ただ、ひとたびドアをくぐると、なかなかゴージャスな雰囲気の店内となっている。


何が面白いかといえば、まず、コックさんが牛生肉の固まりを数本テーブルまで持ってきてくれ、それぞれの肉がどのような出自で、牛のどの部分の肉で、どういう特徴を持っており、どの程度焼くとおいしいかということなどを事細かに説明してくれる。同じ牛のヒレ肉でも部位によってかなり赤身っぽい部分と霜降りっぽい部分があることを知り、こんなにも違うものかとびっくり。じっくり説明を聞いた上で、いったいどの肉を何グラム焼くかという注文を取る。これだけ説明を聞かされると、すべての肉を味わってみたくなるのが人情というもの。4人だったので、5種類すべての肉を400グラムずつ注文し、シェアすることにした。


いかにも高そうな赤ワインや前菜を飲みながらしばらく待っていると、いよいよ真打ちの登場。2キロのステーキとなるとかなりの量である。一番レアっぽく焼いた赤身のヒレ肉から、脂の少ない順に食べていくとおいしいということで、アドバイスに従って手をつけ始めた。ところが、サーロインにたどり着く前にギブアップ。昔ならペロリといけたはずなのに、胃袋が期待に応えてくれないのである。状況は他の3人も多かれ少なかれ一緒で、状況を察したコックさんが近づいてきて、「冷肉にしてもおいしい。明日の朝、冷蔵庫から早めに出して常温に慣らし、それをごはんに乗っけて醤油をかけてたべるとそれは最高」とおっしゃるので、ドギーバッグに入れてもらうことにした。


それにしてもおいしかった。いったいいくらなのか、よく分からない(というか知りたくない)が。