犯人に告ぐ

雫井脩介の「犯人に告ぐ」を読んだ。トヨエツを主人公に映画化されている作品である。手がかりをなかなか残さない犯人に対し、捜査の責任者に抜擢されたアウトローな刑事である主人公が劇場型捜査に乗り出すというストーリー。連日のようにテレビに登場し、犯人を挑発しながら犯人からのメッセージを待つ。ガセネタも多く寄せられる中から真犯人のものをあぶり出そうとしたものの、なかなかうまく進まない。劇場型捜査に対する警察内の反発も徐々に高まっていく。読者が犯人を推理し得ないという意味でこれは推理小説ではなく、むしろ主人公を中心とする人間関係とその利害計算に基づく行動の描写に重きを置いているのだが、どうしても登場人物が多すぎるために個々の人間関係の描写が薄くなってしまっているのが残念。それにしても、映画化に際してトヨエツを主人公に据えたのはなかなかのはまり役である。

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)