大いなる陰謀

久しぶりに映画館へ行き、「大いなる陰謀」という映画を観た。原題が「Lions for Lambs」だから意訳もいいところで、だいぶ安っぽい題名になってしまっている。これだけで観に来る人が減ってしまっているのではないか。ロバート・レッドフォードが監督、そして出演者にトム・クルーズメリル・ストリープらがいるという豪華なお金のかかってそうな映画なのだが、内容はかなり社会派である。大統領選に向けてイラク戦争に代わり、「正義のためのアフガン侵攻」という新しい世間向けのプロパガンダを打ち立てようとする上院議員上院議員の説明を聞きながらかつてのベトナム戦争の泥沼を類推し胡散臭さを敏感に感じ取る記者、上院議員の立てた戦略に従って「誇りを持って生きよう」と死地に赴く2人のマイノリティの若者たち、2人の若者の大学の恩師の心配がシンクロしながら話が展開していく。ものすごく乱暴にまとめてしまえば、ブッシュ政権だけでなく、歴代の政権が安直な海外侵攻により人気取りをしてきていることを痛烈に批判した映画であり、こういう映画がきちんとアメリカ国内で上映されているというのはまだまだアメリカが復活する素地が残されていることなのだと思う。ものすごい暗喩があり、一般のアメリカ国民に理解してもらうためにはもう少しきちんと表現する必要があると感じたが、そこは映画人としてのロバート・レッドフォードのダンディズムなのだろうか、野暮なことはしたくなかったのだろう。