硫化水素自殺の件

最近、連日のようにどこかで硫化水素自殺があったというニュースが流れている。自殺の是非はさておき、マスコミの一面的な報道の仕方に公務員の痴漢報道と同様の違和感を覚える。マスコミにまず報道してもらいたいのが、硫化水素による自殺が手軽に?行えるようになってから日本国内の自殺者の総数が統計上有意に増えているのか、それとも、自殺者の中で硫化水素の手法による自殺者の割合が増えているのかということ。閉塞感のある世相を反映して自殺者数自体はきっと緩やかに増加していると思うのだが、硫化水素自殺の方法の一般化に「よって」自殺者総数が有意に増加しているようなことはないのではないかと推察する。また、伝統的な自殺方法である飛び込みや首つりとの比較で硫化水素自殺がどの程度の割合を占めているのかというデータがもしあれば、意外と少なかったりするのではないか。

マスコミの扇動により、次なる硫化水素自殺を呼ぶというストロー効果的な現象が起こっていることは否めず、また、この硫化水素騒動がメーカーによる洗剤の販売自粛検討にまで至るのは異常な事態である。現在の洗剤に勝る代替物質がないからこそメーカーは潜在的なリスクを承知の上で消費者向けのリスクの表示をきちんと施した上で販売しているのであり、それが買えなくなったとしたら、洗浄力の低い自然素材の洗浄剤で風呂掃除をしなければならなくなり、生活が大幅に不自由になる。この問題に限ったことではないが、人間の文明生活は様々なリスクの上に成り立っていることをまずはマスコミがきちんと認識・報道し、その上で硫化水素の問題を扱うべきなのではないか。自殺の問題は最終的には個人の問題に帰結するだけに非常に難しい問題だと思うのだが、どのようにしたらその総数を減らせるのかという根源的な部分に着目した問題提起と報道はできないものか。