無音潜航

同じ筆者による「八月十五日の開戦」を読み、その描写の具体性が気に入っていた。今回、ハードカバーで気になっていた本書が文庫化されているのを見つけ、さっそく読んでみた。今回は、日本、北朝鮮、中国の三カ国が黄海にて、一隻の日本の潜水艦をめぐって息の詰まるような攻防を繰り広げるというストーリーで、追う者、追われる者それぞれの立場から詳細に描写されている。日本人としては当然ながら日本の潜水艦の艦長に感情移入して読んでしまうのだが、最後までハラハラドキドキさせられる。軍事オタク?の筆者による妥協のない具体的な記述が、人によってはそれがマニアックに映ってしまうかもしれない。また、最初の日本国内で起こったテロ事件のフォローが何もないこと、名前入りで登場し何かの伏線かと思っていた人たちが後半になっても再登場しないのは若干気になった。多少、改善できる余地はあると思われるものの、全体としてはなかなか楽しめる本である。

無音潜航 (角川文庫)

無音潜航 (角川文庫)