脱出記

ようやく本を読める時間ができたので、ふと本屋で目にとまった「脱出記」というノンフィクションを読んだ。第二次大戦中にソ連にスパイ容疑で捕まり、一方的な裁判でシベリア送りにされたポーランド人が仲間6人とともに脱獄し、南へ南へとインドまで徒歩で逃げた実話である。シベリアで凍死するかしないかの瀬戸際を、ゴビ砂漠では熱中症と餓死の危機を乗り越え、仲間を失いながらもさらにヒマラヤを越えてインドに入り、ようやくイギリス軍に助けられて九死に一生を得た本人の執筆であり、淡々と書かれてはいるが、壮絶の一言。本を読み終わってから世界地図を眺め、どうやったら徒歩で、ほとんど何の装備も食料もなくこれだけの距離を踏破できるのだろうかと感動した。何としてでも国に帰りたいという想いが最後まで彼を支えたのだろうが、インドで助けられた際に母国がなくなっていると知ったときの彼の悲哀はいかばかりだったのだろうか。

脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス)

脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス)