不機嫌な職場

今、ベストセラーとなっている新書である。人事系コンサルのワトソン・ワイアットのコンサルタント、出身者が中心となって、コミュニケーションが希薄となった現代の職場環境に対して問題提起をしている。どうして目の前に相手がいるのにメールでコミュニケーションしようとするのか?どうして職場に挨拶がないのか?どうしてイライラとした雰囲気が職場中に漂っているのか?どうしてちょっとしたことで助け合おうとしないのか?などなど自分の実体験からも身につまされることは多い。

著者らは、この問題の根源は仕事の高度な分化・専門化、成果主義の不適切な適用にあるという。かつての日本企業では、良い意味でも悪い意味でもゼネラリスト志向、1人1人の仕事の領域が不明確で、私生活と仕事生活が混じり合っていたため、欧米に比べて生産性は低くとも助け合いやコミュニケーションがあり、いわば1つのコミュニティとして動いていた。それが、今は、東京のマンションと同様に職場でも隣の人がいったい何をやっているのかが分からないという状況となってしまっている。このような問題に対して先んじて取り組んでいるのが意外にも超先進企業と認識されているグーグルやサイバーエージェントなのだという。よく知られている例ではあるが、グーグルの場合、スキー場を借り切っての社員旅行、毎週のパーティ、大部屋主義などなど、自分たちの仕事が孤独な作業に陥りがちなのをきちんと認識した上で、過剰なほどにコミュニケーションを促進し、そして更なる創意工夫を引き出す工夫をしている。

新書だけに、問題点の提起、解決の方向性、実例をコンパクトに紹介しているだけであるが、人事・組織制度に関する今後のトレンドを理解する上では十分な内容だと思う。経営者のマクロ的な視点から書かれているため、下っ端の1人1人がどうしたらいいのかというところまで言及がないのは残念。まあページ数の都合上仕方ないか。

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)