維持管理の大切さ

ある筋では著名な、若手女性建築家と話をしてきた。仕事でインタビューをしに行ったのだが、仕事と関係のない話が9割、お忙しい中にも関わらず、話が盛り上がってしまい3時間半も居座ってしまった。

色々と考えさせられる話が多かったのだが、1つ面白かったのは、ホテルの事例。日本津々浦々色々と立派なホテルが建っており、中には著名な建築家が設計したものも多いのだが、完成直後1〜2年は設計者のフォローアップもあるため、意図どおりにメンテナンスが為され、またリネンやスリッパなどの備品類も全体設計と調和したものが用いられ、サービスも建物のグレードに見合ったレベルが維持されるのだという。一方で、設計者のフォローアップがなくなり、そして完成当初のスタッフが徐々に入れ替わるにつれて、「安かろう悪かろう」に流れてしまい、メンテナンスは手抜きに、備品類も背景思想の知らない人間が安物の調達に走り、サービスも哲学のないものになっていくのだという。5年後に結果として何が起こるのかというと、見た目はすごく立派でもソフトがダメな、世の中に多く見られるホテル。

この話を聴きながら、「経営もまったく一緒だ」という話をさせてもらった。カリスマ的な経営者が入って、大規模な経営改革を実現したとしても、それがやりっ放し、一過性のものになってしまう事例が多い。愚直なコミュニケーションを過剰なほどに意図的に続けないと、5年後には多くのホテルと同じ状況になる。

他に「建築では遠景と近景のバランス、結びつけが大事なのだが、日本は近景を疎かにし過ぎている」などの話も伺ったが、これも経営へのアナロジーができる話である。