派遣切り問題

ソニーが非正規雇用を国内外合わせて8,000人切るというニュース。いつ経済が回復するのかが不透明な中で、しばらくの間は工場の稼働率を相当程度下げなければならず、それに伴って余剰人員を削減するというのは企業経営側としてはしごく真っ当な判断であり、そうしないとソニー本体の経営、正社員の雇用が危うくなってしまう。

マスコミは、こぞって、強者の大メーカー=悪者、弱者の派遣労働者=被害者という構図でお涙頂戴的ないつもどおりのステレオタイプ的な報道をしているが、そんな単純な問題ではない。冷たい言い方をすれば、派遣労働者は派遣という不安定な身分であることを承知で働いているのであり、いざ経営が危なくなったときに正社員よりも先に切られるのは当たり前、それでメーカー(派遣会社ならまだしも)に対して文句を言うのは間違っている。一方で、派遣しか選択肢がなかったから仕方なく派遣で雇われている、やっている仕事自体は正社員と同じであるという主張がある。この主張がすべて正しいとは思えないが、一部事実の場合もあるだろう。正社員として働いていてもおかしくない能力を有し、正社員希望の人が派遣に甘んじているのは、企業側にとって派遣で雇っていた方が様々な理由により有利であり派遣雇用のインセンティブが働くからである。このインセンティブを和らげるには、正社員:派遣比率で規制を設ける、税制・補助金などで経済的インセンティブを設けるなど政策的な手当てを講じてやる必要がある。しかし、あまりに強い正社員への政策誘導をしてしまうと、今度はヤミ派遣が流行ったり、メーカーの工場自体が海外逃避したりしてしまうという問題がある。要は保護しなさ過ぎは良くないし、保護し過ぎも良くないということで、その間で繊細な舵取りが必要なのである。

まあ、個人レベルでは、いつ会社に切られても大丈夫なように日々精進しておけということだろう。これは人ごとではない。