オリンピックの身代金

奥田英朗の「オリンピックの身代金」という本を読んだ。この人もほとんどハズレがない作家である。昭和39年の東京オリンピックに向けて準備が進む東京が舞台である。秋田から出稼ぎで東京オリンピックの工事に駆り出されていた兄がひっそりと死に、東京と地方の格差、金持ちと日雇い労働者の格差に憤りを感じた犯人が、兄を死なせたオリンピックというイベントにテロを仕掛けながら身代金を要求するというストーリー。最近はやりの、最初から犯人が分かっている構成なのだが、追う警察側と追われる犯人側の両方の視点から、時間差をつけて交互に章が入れ替わる形(追う警察側の描写の章の方が時間が進んでいる)で話が進んでいく。たとえば警察側の描写の章で警察が犯人とニアミスして取り逃がしたという記述があったら、それがなぜだったのか犯人側の視点の章を読むと理解できるという感じ。うまく裏表を組み合わせながら構成したなあと感心しながら、ついつい次の展開が気になってどんどん読んでしまう。結構な長編なのだが、すっかりはまってしまった。

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金