マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

友人Aに薦められて読んだ本である。ケロッグにてMBAを取得した後、当時急成長中のマイクロソフトに就職してオーストラリア事業、中国事業でエグゼクティブを務め順風満帆なキャリアを歩んでいた著者であるジョン・ウッド氏が、バケーションで訪れたネパールで人生観の転換をさせられる場面に遭遇し、社会起業家の道を歩むことになったきっかけとその後を記しているノンフィクション。フローレンスの駒崎さんの本「「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方」と同じく、すっかり引き込まれてしまった。

アメリカ人の本らしく自分がマイクロソフト時代にいかにすごい人間だったかということを繰り返し書いているのがちょっと鼻につくが、著者がそんな将来を約束されたマイクロソフトの仕事を投げ打ち、彼の価値観の転換を理解しない彼女とも別れ、当初は何の収入もないNPO活動に飛び込んだ度胸はすごいし、そしてその後数年間で目に見える大きな実績を築いている実行力もまたすごい。彼の問題意識は特に東南アジア地域において本も満足に読むことができない教育難民が溢れているということであり、彼のNPOであるRoom to Readではそんな国々に本を贈ること、図書館や小学校を建てること、意欲ある子供たちに奨学金を与えることに取り組んでいる。怪しげなNPOがたくさんいる中、彼は豊富なビジネス経験を糧に、とにかく短期間に実績を築くことで求心力を高め、寄付者と成果の間の因果関係の透明性を高めるという工夫をしている。たとえば4,000ドル寄付すればネパールに図書館を1ヶ所新設することができるという事実をこれまで知らなかったが、彼はこういった事実を周知させ、かつ寄付してくれた人々に対して、寄付金が実際にどのプロジェクトに使われているのかということを可能な限りディスクローズしているのである。

おそらくこんな彼のNPO活動を「砂漠に水を一滴垂らしただけ」などと批判する評論家的な人たちもたくさんいるのだろうと思うが、そういう風に批評だけする人よりも、実際に行動に移しているウッド氏の方がずっとすごい。

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった