高速道路通行料金1,000円の功罪

補正予算が成立し、3月28日以降、順次、週末の大都市圏以外の高速道路の通行料金の最高額が1,000円になる。週末のドライブ需要が増え、地方部の観光地に多かれ少なかれお金が落ちること、もしかしたら自動車購入需要が増えるかもしれないことはたしかに景気対策としてはよいかもしれない。特に日本の基幹産業であり、裾野も広い自動車関連の需要を刺激できるのであれば乗数効果も期待できて効果的なのだろうが、やり方がどうも回りくどい。欧州(や一部の自治体)のように、自動車購入そのものに補助金を交付した方が即効的なのではないか。環境対策との両立という意味ではハイブリッド車などの高燃費車に交付先を限定しても良いと思う。自動車を実際に購入する特定の層しかその便益を享受できないという批判はあるだろうが、どんな政策を打とうと多かれ少なかれ不公平感は出てしまうものであるという割り切りが必要である(住宅ローン減税も然りである)。

あくまでも現状の社会構造を前提とした短期的な景気対策という観点でみれば自動車分野への公共投資というのは有効だと思うが、中長期の社会的な観点からみると、個人的には否定的に考えている。交通機関としては自動車はハイブリッド車といえども環境性能が相当に悪い手段であり、低炭素社会の実現のためには国全体として鉄道や船舶への回帰を促していく必要がある。高速道路通行料金を1,000円にするくらいであれば、休日の新幹線や特急列車の特急料金を1,000円にするような施策があってもよかったのではないか。東京駅発のブルートレインも今週で廃止されてしまうが、どうして日本はこんなに鉄道に対して冷たい社会になってしまったのだろうか。