終着駅

白川道の本はテイストが合うのでずっと読んでいるが、この「終着駅」はヤクザの親分が主人公の切ないラブストーリー。ある時、ヤクザの親分が自分と親子ほどの差がある盲目の女の子に出会い、死別した自分の恋人と瓜二つである彼女の純粋さに心を打たれてヤクザの世界から足を洗おうと決心する(こう書くとどうも陳腐になってしまうが、経緯はもっと複雑で美しい)。ラブストーリーとはいえ、白川道の本なので、そこはあくまでもハードボイルドなタッチである。帯にあのベストセラー「天国への階段」を超えたとあったが、それが嘘でないと思えるくらいに中年男の気持ちの描写が繊細で、つい主人公に感情移入してしまう。女性にこの手の小説がどのように映るのかは未知数だが、20代後半以上の男性にはお薦めである。

終着駅 (新潮文庫)

終着駅 (新潮文庫)