国民投票法案

安倍さんがおそらく今国会で一番通したい法案である国民投票法案が衆議院で可決され、参議院へ回された。憲法そのものに改正規定があり、改正の手続として国民投票を求めている以上、その国民投票の手続をこれまで定めてこなかったのは、与野党がどうこうというよりも、立法府全体の怠慢だったと思う。こういう状況の中、何とも不可思議なのは、民主党が「民主党の対案を全面的に受け入れない限り採決では反対する」と言って党として反対した(できた)こと。民主党の対案は、国民投票の対象が憲法に限定されず、統治機構生命倫理の問題にまで拡げていることが特徴だが、とりあえず憲法自体の国民投票手続を定めることについては大きな違いはないはずである。野党第一党として、注目を浴びる法案について与党案を丸呑みできないというメンツの問題が前面に出たということだろうか。


民主党内にも憲法改正については色々と不協和音があることは承知しているが、どのように憲法を改正するかというサブスタンスの議論をしているわけではなく、あくまでもこれまでの不作為を是正して、手続をきちんと決めるというロジスティックスの話をしているのだから、党としては、少なくとも党議拘束をかけないなど、もっと大人の対応をすべきだったのではないだろうか。他の野党と同様にメンツの問題で国民投票法案の制定に反対するというのでは、とてもではないが国民の信頼を得て政権交代を目指すのは無理だろう。幸い、民主党の中で信念を持った数人が採決を「欠席」したとのこと。政治家としては仕方のない行動なのだろうが、犬の遠吠えのように見えなくもない。ぜひ民主党内の政策派の議員にはもっと党内で力をつけてもらい、メンツではなく政策で与党と渡り合える政党になってもらいたいもの。