バイアウト

幸田真音の新刊「バイアウト」を読んだ。その名のとおり、ある音楽会社の支配権を巡って、その音楽会社の幹部、バイアウトファンド、外資系証券会社などそれぞれ思惑を持つ人たちを描写しながら物語が進行していくのだが、別名を使ってはいるもののライブドア村上ファンドの事件を参考にしながら書いており、そのあたりが描写の生々しさを醸し出している。この小説に彩りを添えているのが、主人公である外資系証券会社に勤務し、今回のバイアウトに関係することとなった若い女性と、対象会社である音楽会社幹部である小さい頃に生き別れた彼女の父親の複雑な人間関係。主人公の心理描写とバイアウトの進行がうまくシンクロしている点が幸田真音の小説らしいところ。いずれにせよ、気楽に読み進められるエンターテイメント系の経済小説である。


バイアウト

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