夜明けの街で

東野圭吾の新刊を読んだ。主人公である平凡な中年男がふとした拍子に複雑な出自を持つ会社の派遣社員と不倫関係に陥ってしまい、家庭と不倫関係の二重生活の維持に思い悩むというストーリー。何がすごいかというと、こういうよくありそうな単純な設定を、主人公の心理描写をメインに1冊の本にまで仕立て上げてしまう著者の筆力。設定が単純だからこそその描写力のすごさが目立つ。読んでいるとまるで自分が不倫関係に陥ったように錯覚してしまうほどに表現にリアリティがあり、文字に表れてこない当事者間の心理的駆け引きが隙間見えてくる。著者自身がこんな経験をしないとここまで書けないのではと思えてしまうがどうだろうか。ちょっと大人な内容で、通常の東野小説の読者よりも高い年齢層向けだろう。

夜明けの街で

夜明けの街で