遊戯

先日ガンで亡くなった藤原伊織氏の遺作である。病床で何を想いながら書いていたんだろうと考えながら読破したのだが、これまでの作品に負けず劣らず素晴らしい中編集に仕上がっている。彼の文章に何で惹かれるのだろうかと時々考えるのだが、おそらく、すべてがすべてを明文で語りきらず、むしろ行間で勝負しているところにあるのではないだろうか。主人公が必ずと言っていいほど30〜40代の男性という設定だからということもあるが、文章を読みながらこちらのイマジネーションがどんどん刺激され、感情移入し、自分で行間を埋めていってしまうのである。こういう読者の主観を利用する手法なので、きっと、小説から受ける心証や読後感の振れ幅も読者によって相当大きいのではないか。とにかく、もう彼の小説を読めないのかと思うと本当に残念である。

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