安政五年の大脱走

最近、集中的に読んでいるのが五十嵐貴久という作者の本。いずれも中身は軽いのだが、それだけに、疲れた頭で読むと、あまり考えずにどんどん読み進めることができ、癒しになる。今回読んだのは安政五年の大脱走という本。この人の本にしては珍しく江戸時代末期が舞台となっている。当時、我が世の春を謳歌していた井伊直弼に意中の姫がおり、ところがどうしても自分の方を振り向いてくれないため、その姫が属する藩の藩士もろとも脱出がほとんど不可能とされる断崖絶壁の山頂に幽閉し、力ずくで自分の方を向かせようとするストーリー。それに対して、藩士たちはその山頂からの脱出を試みるのだが、その試行錯誤の過程をじっくりと書いている。時代設定は違えど、「フェイク」など他の小説とスピード感、展開は似ている。エンターテイメント系の小説としてはなかなかいい線をいっているのではないか。


安政五年の大脱走 (幻冬舎文庫)

安政五年の大脱走 (幻冬舎文庫)