闘う経済学

竹中さんの新著「闘う経済学」を読んだ。題名からすると、何やら経済学の本のように見えるが、経済学的なことを書いてあるのはほんの一部で、竹中さんが大臣として小泉行財政改革を支えた時代の功績を淡々と紹介している。「経済学者の闘い」という方が正しい。年の功なのか、高橋さんの「さらば財務省」のようなギラギラ感はなく、スッと読める文体である。不良債権処理のこと、郵政民営化のこと、地方行財政改革のこと、経済財政諮問会議のこと、政府与党の政策決定プロセスのことなどがトピックごとにまとめてあることも読みやすさの一因だろう。中身で同感したのは、本書の中で繰り返し竹中さんが言う「戦略は細部に宿る」というフレーズ。つまり、いくら理想的な青写真を描いたとしても、それを実現するまでのプロセスまで含めて戦略的に考えなければ政策論にはならないということなのだが、霞が関には青写真を描く人は多けれど、その実行案を描き、そして実際に実行できる人材はほとんどいないということを暗に批判しているのだろう。この本の最後の20ページにそのエッセンスが書いてあるので、そこを読むだけでも本書の価値はあるだろう。

闘う経済学 未来をつくる[公共政策論]入門

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