ファイアー・フライ

高嶋哲夫は当たりの本が多いが「ファイアー・フライ」、これも面白かった。とある誘拐事件から物語が始まるのだが、誘拐犯人の生い立ち、被害者であるエンジニアの会社人生、私生活が色々と複雑に混じり合いながらスピード感良く展開していく。初めは誘拐犯と被害者という敵対関係にあったのが、これをストックホルム症候群と言うのか、徐々にお互いに感情移入が始まっていく。とかく表面的表現、技巧に陥ってしまいそうな推理小説的設定を、関係者の感情表現や関係者間の感情のシンクロをを詳細に描写することにより重厚な仕立てとなっている。すっかり引き込まれてしまった。

ファイアー・フライ

ファイアー・フライ