東洋と西洋の結節点へ

quechee2009-09-17

ワシントンDCからフランクフルトまでは7時間強のフライトである。太平洋横断よりも大西洋横断の方が短く、かつアメリカの東海岸からの所要時間で考えると更に大きな差があるが、これがアメリカと欧州の政治経済面での近さ、アメリカや欧州から見た日本や中国の遠さの大きな一因なのかもしれない。言語的な問題もあるが、これも根本的には地理的な遠近の影響があるはず。「極東」という用語もよく理解できる。一定の距離感が不可避で、更に縮めるのに限界がある、相当な労力が必要なのであれば、欧米協調に重きを置いて付き合うよりも、アジア各国との付き合いにより資源配分を厚くして中国や韓国などといがみ合わずにもっと仲良くしなければいけないなと感じる。対欧米よりもより容易にシナジーが発揮できそうな近くの国としっくり行かないのはお互い不幸である。

フランクフルトに到着したのは朝の5時過ぎ。サマータイムのせいもありまだ暗い。入域審査も到着したときにはシャッターが閉まっており、それが開く瞬間というのを初体験した。そりゃ到着便がなければ開いている意味などないのであり、24時間営業なわけがない。1時間強のトランジットで今度はミュンヘンへ。ミュンヘンでは着陸時に突風が吹いてゴーアラウンドとなったが、そのまま着陸していたらどうなったんだろうと思うと、ちょっと冷や汗。フランクフルトやミュンヘンはここ数年高密度で利用している空港なので、もはや空港内の移動も慣れたものである。特にミュンヘンの空港はドイツらしく機能的にできており、かつきれいなので、個人的には好きな空港の一つ。ルフトハンザのラウンジで日経と朝日を獲得することに成功、ドイツ南部に来ると好んで食べるプレツェルをかじりながら、期待していた新閣僚のインタビュー記事など載っていたので熟読させてもらった。

ミュンヘンでは早くも出域審査である。トルコはまだEUに加盟できていないので、滞在2時間程度で早くも入域スタンプと出域スタンプの両方を獲得してしまった。まあ、欧州は入出域手続が極めて簡単なので、すべての指の指紋を要求するどこぞの国と比べてまったく負荷には感じない。ここでも1時間強のトランジットでイスタンブール便へ。ミュンヘンからイスタンブールへは更に2時間強のフライトである。着陸に向けて高度が下がると、美しい海岸線と、これまで接したことのない独特の風景が広がり、未知との遭遇ということでちょっとワクワク感が高まる。

イスタンブールの空港自体は新しいのだが、パスポートにスタンプを押すだけにも関わらず入国オペレーションが非効率だったり、荷物がなかなか出てこなかったりと中身に課題がある。短いトランジットが続いたのでちゃんと荷物が出てくるのか心配だったが、そこはさすがルフトハンザ、「HOT」という黄色いタグを付けてくれており、きちんとスーツケースもゴルフバッグも出てきた。機内食はそんなおいしくない(米系よりはまし)けど、オペレーションは信頼できるエアラインである。空港のATMでトルコリラなる通貨を引き出す。為替相場が分からなかったのだが、両替所で対ユーロ、対ドルの相場が表示されていたので、1トルコリラ60円程度と検討をつけてとりあえず200トルコリラをおろす。

空港からは、リムジンバスで予約したホテル近くのタクシン広場まで行ってくれるようなので、さっそく両替した中から10トルコリラを払って乗車。渋滞はあったものの40分程度で目的地に到着、15時前にはホテルにチェックインできた。ホテルの入口に金属探知機があるのにはびっくりした。やはり治安に少し問題があるのだろうか。ホテルの部屋でテレビをつけると、何とNHKが流れている。ちょうど21時のニュースが日本の放映と同時進行で流れており、めちゃくちゃびっくりである。番組表を見るとサラリーマンNEOまであるではないか。エレベータは三菱製だったし、インターネットのプロバイダはドコモだし、ホテルには日本料理屋が入っているしで思いの外、親日的な国なのかもしれない。ちょっと興奮して妻にスカイプで電話したところ、クールに「知ってるよ。学生時代に行ったことあるもん」との反応。彼女がトルコに来たことがあるのをこのとき初めて知った。10年一緒でも知らないことがあるもんだと思った。

せっかくなので、夕方、ミネラルウォーターを買いがてらちょっと街中を散策。トルコの基本言語はもちろんトルコ語だが、重要な表示は英語併記されており思ったよりも困らない。去年訪れたチェコよりも観光客には親切な感じ。公園には男同士でベンチに座って語らっている連中がたくさんいたり、男同士でつるんで闊歩している輩がいたりでイスラム的な匂いが。歩いている人を観察すると、イスラムでもなく白人でもなくアジアでもなくという不思議な感じの人が多い。まさに東洋と西洋の結節点で色々な血がブレンドされているようである。イスタンブールの街は、途上国っぽい汚らしい場所もあるものの、独特の街並みは印象的だし、ウォーターフロントの雰囲気や遠景は基本的にきれい。香港に行ったときに感じたのと同様、人々に活力が感じられるのが印象的だった。ただ、やたら警官の数が多く、治安維持に苦心しているのも何となく分かる。ドライバーのモラルが低いのか、マンハッタン以上にやたらとクランクションが鳴り響くのは何とかしてほしいと思った。散策の最後に1.5トルコリラを支払ってトラム(広島電鉄の市電の車両と同じシーメンス製だった)に乗り、ボスポラス海峡まで行き、欧州側から望む。ここが東洋と西洋の分岐点なんだと感慨にふける。たくさんのフェリーがアジア側との間で発着しており、日常的に海峡を挟んだ行き来があるんだなと実感した。