霞ヶ関改革に関する冨山和彦さんの講演

NPOの企画の一つとして、JAL再生で話題の人となっている産業再生機構の元COOの冨山和彦さんに基調講演をいただくイベントを開催した。かつてマネックス松本大さんとの共著の「この国を作り変えよう」を読んでいたので、どんな話をいただけるのか楽しみにしていたが、期待どおり面白いお話だった。話の中身はもちろんのこと、歯に衣着せぬ話法がなかなか清々しく、好感を持った。

冨山さんには霞ヶ関の官僚組織がなぜうまく機能していないのか、機能させるにはどうしたらよいのかというテーマについてお話をいただいた。彼によれば、一般的に組織がうまく機能するためには3つの利益、つまり「国益(社会益)」「組織益」「個人益」の共通部分が最大化する必要があるのだが、現在の霞ヶ関はこの共通部分が極小化しているためにうまく機能していないのだという分析である。既得権益にがんじがらめにされ国益よりも省益や局益を求める仕組み、低成長時代の中での目標の逸失、減点主義による現状維持の推奨、給料の削減などなどにより、霞ヶ関の体制は瓦解寸前の状況にあると明快に言い切る。このような状況の中で、既得権益の打破がまずは重要であるとのご認識であり、ご自身を含めた逃げ切れる世代が決めている現在の社会のルールを、若い世代が積極的に現状に合致するように変える行動を起こしていくことが重要とのことである。たとえば、選挙で言えば、一票の格差と若い世代の低投票率の相乗効果により、地方の高齢者の一票が過度に国政に反映され、これが既得権益の温存につながっている状況であり、制度改正による一票の格差の根絶と若い世代の「自覚」による投票率の向上がその打破のカギとなる。

これから冨山さんが取り組まれるJALは、様々な既得権益が渦巻いており、まるで霞ヶ関の縮図のように思うが、ぜひその再生を成功させてもらって、霞ヶ関改革に活かすことができればと思った。

この国を作り変えよう 日本を再生させる10の提言 (講談社BIZ)

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