鳩山外交への期待

鳩山さんご自身の国連などでの演説、幸夫人の音楽外交共々、おそらく一般の期待値を超えるものだったのではないだろうか。内外のマスコミで好意的に取り上げられているようだ(もっとも、アメリカの報道はイランやリビアの方が気になるようだが)。「温室効果ガスの排出量25%削減は非現実的だ」「外交交渉の取引材料とせずにいきなり日本だけがコミットする形でぶちあげるのはおかしい」など特に実務者を通じた批判の声はあるものの、到底実現不可能だと思われる一つのビジョンを超然的にぶちあげ、資源配分を考えてそのビジョンの実現に向けて死にものぐるいで尽力するというのはリーダーの大きな役割なのではないかと考える。ビジョンの実現に向けて努力する過程で内外の信頼を集め、リーダーとしてのカリスマ性を築いていくものなのではないか。小泉さんとて、(分野は違うものの)郵政民営化道路公団民営化という当時は到底不可能と考えられた田中政権の遺産の解体をビジョンに掲げ、愚直に、かつ、ぶれずにそれらを追求する姿勢が彼のカリスマを築いたように思う。そういう意味で、鳩山さんがこれからこの25%削減をどのように実現していくのかという点が真価を問われる場面であり、注目していきたい。オペレーションのPh.Dということなので、ロジカルかつ実現可能な青写真ができてくることを期待している。

なお、鳩山さんの演説は、国際公用語である英語で聴衆にダイレクトに語りかけている点が大きなポイントである。これまでも英語で演説する日本の首脳はいたが、鳩山さんは留学経験などで国際交渉の場以外で英語を使っていた経験があるからか、発音はそれほどは上手でないものの(人のことを批評できる立場にはないが)、丁寧で相手に理解させる英語である。また、外人コンプレックスがないからか堂々としている。それに加え、スタンフォード大という国際的に評価される学歴によるクレディビリティとの合わせ技が演説の中身を引き立てている。欲を言えば、目線の使い方、手のジェスチュアなどもう少し基本的なプレゼンテーションスキルを活用していただきたかったが。

それよりもすごいなと思ったのが幸夫人の音楽外交。宝塚出身ということが影響しているのか天性の社交性と明るさを持っており、これまでの三歩下がった風を装ったファーストレディとは全然違う。更に鳩山さん以上にいい英語を使え、通訳を介さずにどんどんアドリブが出る点が本当に素晴らしい。伴侶とする女性により男の価値が決まると言われるが、この夫人のお陰で鳩山さんも相当に男を上げているのではないかと思う。

当面は外交で得点を稼いで内政での失点を埋めるというのが鳩山さんの戦略だろうか。安全保障など難しい問題が山積しているが、この出だしを見るかぎりはうまく切り抜けてくれるような気がする。